越冬活動支援のお願い

カトリック名古屋教区福信館 炊き出し部代表 竹谷 基


 先日、私どもの福信館に着替えを取りに来たホームレスのおじさんと話をしました。年令は八十二才、名古屋市内に、家も息子もあるという、しかし、家には絶対戻りたくない、というのは、嫁がいじめるからだ、と言われました。また、最近、炊き出しの列の中に、見かけないおばあさんが並んでいました。彼女の身なりがこざっぱりとしていましたので、わたしは、怪訝に思って、野宿しているのですかと尋ねました。すると、野宿をはじめて一ヶ月たつ、との答え。理由は、今、七十才で、十年前夫に死に別れてから、アパートで一人暮らしだった、子供は全然見てくれないし、お金もなくなったので、アパートを追い出され、それ以来、野宿している、けれど、他の野宿しているおじさんたちが面倒見てくれるので楽しいよ、と語られました。今、わたしたちの国では高齢化社会と声高に叫ばれていますが、こんなところにもその影響があらわれ、これからますます彼・彼女のようにホームレスを余儀なくされる人たちの増えることが予想されます。
 ある教会員の息子さんは、精神障害者のため親の元でくらすしかできないのですが、時々、家を出て何ヶ月も野宿生活をしては、戻ることを繰り返しています。親ははじめは心配してあちこち捜し回りましたが、今では、帰ってくるまで待っています。子供の方は家にいても窮屈だから、食べ物や寝るところに不自由しても、野宿のおじさんたちが親切にしてくれて居心地がよいため、そうするということであります。若年層のホームレスにはそういう方が結構みられます。
 まもなく、新年・お正月がやってきます。私たちの多くの人々は、新しい年への希望に胸を膨らませたり、一家団欒のお正月に楽しい思いを馳せています。しかし、他方、私たちの周りには、そのささやかな幸福の一時すら過ごすことの出来ない人々がいます。
 彼らは、失業をはじめ上にあげたようないろいろの理由で、野宿での生活を余儀なくされている人たちであります。現在、名古屋市には名古屋駅、栄の周辺二ヶ所だけでも約五五〇人〜六五〇人もの野宿生活者がいて、近年、増加の一方であります。彼らは、生活に必要である最低限の衣食住に事欠き、また、差別や偏見から人権を無視され、時には、殺傷さえ受けています。このような非人間的環境の中で、彼らの心身は病み衰え、栄養失調や凍死などで一年間に約三〇人〜四〇人もの人が平均五六才の若さで亡くなっています。なかでも、十二月から三月にかけては冬期のために約二〇名の方々の生命が失われています。
 私たちは、一九七五年から、こうした野宿を強いられててる人々を見過ごすことができず、特に、厳冬期であり一年で最も華やいだ時期である年末年始に「一人の死者も出すな」を目標に、「越冬活動」を行っています。
 今年は第二十二回目の「越冬活動」となりました。これまで、多くのみなさまからのご理解とご協力の下、続けれて来られましたが、長引く不況による野宿生活者の増加と高齢化により今まで以上に厳しい状況になることと思われます。
 イエス・キリストは「己を愛するごとく隣人を愛しなさい」と私たちを招いています。お正月、誰もが暖かく幸せに過ごしたいと願うことでしょう。
 どうか、会員兄弟のみなさま、野宿生活の人たちが、同じようなお正月を贈られるよう、暖かいご支援をいただきますよう、切に、お願い申し上げます。


「ももちゃん便り」目次に戻る