依存症からの回復って何?

名古屋ダルク代表 柴 真也


  桜たちが葉桜へと姿を変えてゆく頃、依存症回復者との出会いを求めて、NAハワイ・オアフ島ギャザリング(薬物依存症回復者の大会、集まり)へとワクワクしながら向かいました。
日本では日常的に有名人の薬物問題を取り上げてはいる。薬を使った経緯や批判は耳にタコができる程聞かされるが、薬物依存から脱却する方法については誰も明確な答えを持っていない。そう、誰も知らないのだ。「深く反省し二度と薬に手を出すな!」ぐらいでしょうか?私たちはその回答を日本より進んでいるアメリカへ求めました。ミーティングと呼ばれる依存者本人のグループセラピー、NAの12ステップ、メイド イン アメリカです。

 話が少しそれましたが、薬物、アルコールをただ「止める」ことだけでは長続きしない。人生、生き方そのものを変える必要がある。その答えは「それ」に成功している人だけが持っている。では、ハワイでの体験を少し紹介します。

 皆を連れて行った私・・・その私が入国審査で完全に不審者、犯罪者扱い。近所のコンビニに行くような格好のせいか、オシャレな髪型のせいか、薬物依存者の集いの時しかアメリカに来ないパスポートの記録のせいか。「逮捕されたか?」「マリファナやったことあるか?」などなど全て「NO」と答えて善良日本人とご理解頂き、入国。

 オアフ島は愛知県にも満たない小さな島。そこで毎日、5〜6会場でNAミーティングが行われている。リハビリ施設も大小様々沢山あります。夜は英語のミーティングに参加しました。ミーティングのスタイルは日本と同じ、一人ずつ話しをしたい人が話し、残りの人は聞く。回復と経験を分かち合う。ミーティング後メンバーの一人が日本語で話しかけてきた。変てこな日本語・・・聞けば子供の頃日本で暮らしていたそうで、大きな体の白人が小学生のような日本語を話していた。ナットク。何人ものメンバーとハグをして少し話した。「仕事がなかなか見つからない」「今はリハビリ施設にいる」「どのくらい薬を止めている」・・・肌の色は違っても、抱えている問題ややっていることは同じだった。

 大会までの間は日焼けや運動、街を探索したり、$6のステーキ弁当を海で食べる贅沢など楽しんだ。いざ大会当日、ワイキキから車で1時間半位のオアフ北部サーフィンのメッカ、海ガメもフツーに泳いでいるノースシュア地区にある「キャンプ モクレイア」へ3日間貸切のキャンプ場に数百人のアディクト(依存者)が集う。私たちは6名で会場入りした。すでに多くのメンバーがいてあたたかく出迎えてくれた。この大会に始めて参加したのは12年前。友人と呼んでもよい仲間もいる。久しぶりにお互い元気な姿で会えた。それだけでも来た甲斐があった。

 「カウントダウン」というクリーンタイム(止めている期間)を長い人から数えていくイベントがある。50年、49・・・30・・20・・10・・1年、11ヶ月と、期間が少なくなる程、盛り上がる。そして1ヶ月、数日とボルテージはどんどん上がる。「数日間」しか止めていないメンバー程大切なのだ。一番苦しい時期だから皆サポートをする。そして数年、数十年やめている人は、その経験と力、希望を惜しみなく、皆の前で分かち合う。これらは建て前のパフォーマンスではなく、愛をこめて行われる。それを肌で感じる。日本のメンバーは始めてくると本場のフェローシップに感動する。来てよかったと。そして皆無事に帰国し、いつもの日常に戻った。

 「ダルク」という仕事を始めて12年程の時が経った。この場所で私や多くの人が健康と人生を取り戻した。最近、今後の仕事について考えることがよくある。「ヒマ人」と笑う人は笑って下さい。ダルクというのは一時的に利用する場所、社会復帰もその目標の一つ。しかし薬が止まってもアルバイトや一人暮らしが困難な人は沢山いた。さて、どうする。無いなら作ればいい。長期滞在型の新しい「ダルク」をそんな妄想(目標)をかかげつつ、今日一日を過ごします。
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