胡散臭さを越えて

ダルク 外山 憲治


 いつもダルクを支えてくださる方々に心からお礼申し上げます。

 先達て、久しぶりに誰もいないダルクで留守番をしていました。電話が鳴り受話器を耳にあてると「コカインが止まらない」と言う相談。しばらくして今度は若い女性の声で「覚醒剤がやめられない」との事。夕方になって市内の警察から電話が入り二人の刑事に護送されたシンナー少年がいきがって登場しました。相も変わらず胡散臭い人達がここにやって来ます。

 1989年に全国で2番目に名古屋ダルクが誕生した時にうれしくてこの朗報を届けようと病院、保健所、警察などに行きました。勇んで担当者に会い、話をするのですが、いつも胡散臭そうに見られスゴスゴと肩を落として帰る日が続きました。毎日の事ですからホトホト疲れましたが、さりとて他にする事もないので「今日だけ」と念じながらダルクのメッセージを届けました。しばらくたって理解してもらえないと言う事を理解する様になっていきました。つまり私は足を運んで出会いと体験を繰り返している内に成長していったのです。

 実はこの胡散臭さこそ、他の所ではできないダルクの魅力の一つです。皆ダルクにたどりついて、やっと被っていた仮面をはがしてホッと一息つきます。妖しげだからこそできる事があるのです。私は開設当時を回想しながらあの時出会った方々に「貴方が胡散臭いから私が妖しげに見えたのですネ」と親しみをこめてメッセージを送ります。

 長年、偏見と差別の中でダルクを支えてくださいました皆様の勇気に深い感謝を表します。ありがとうございました。

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