「出会い」
竹谷 基
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95年の秋頃から、ちょくちょく福信館に顔を見せるようになれました。こぎれいでこざっぱりした身なりからは、高速道路の高架下で野宿している人にはとてもみえない女性でした。ホームレスのおじさんたちと月一度泊まりがけで出かける畑作業にも、炊事係りとして参加しました。そのようにして、次第に、親しくなって行きました。毎年、越冬期間、年末年始野宿を強いられた人たちのために約一週間7回分の夕食の炊き出しをしています。そのため、多くの協力者が必要となるのですが、時期が悪いため集まりにくくなっています。しかし、その年は、Aちゃんに手伝ってもらい大助かりでした。それは、彼女が野宿して初めての冬で、とても辛いと語っていたのを、それでは、せめて年末年始、畳の上で寝たほうがいいだろうから、福信館に泊まって炊き出しを手伝ってくれたら、こちらも助かる、と言ったのがきっかけでした。彼女の手伝いは他のボランティアの方からもたいそう喜ばれました。
彼女が、どうして、野宿するようになったのか聞いていないのですが、口の端々から貧しい生活をしてきたことは窺い知れます。そのうち、野宿を止めて働きたいと言われたので、まず、アパートを借り、(福信館高齢者アパート基金から借用。ホームレスの方の希望者に無利子で融資。)そして、職安にいっしょに(読み書きが不得手のため)行き、仕事を探しました。運よく、その高齢(63歳)にもかかわらず、清掃会社の正社員として採用されました。現在、ある大学の清掃に毎日通勤し、手取りで約12万円の収入があります。彼女は、自分が働いて得た収入を初めて自由に使える、と喜んで話してくれました。
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彼に初めて会ったのは忘れたましたが、かれこれ7〜8年のつき合いだと思います。彼ともよく畑に行って、いっしょに汗を流しました。また、ある教会から植木の剪定を頼まれて(ホームレス人材活用センター:軽作業などを請け負う)、いっしょに、向こう見ずにも、木をバサバサ刈り込んだこともあります。彼は、もともとは、ペンキ屋の息子でしたが、義兄に後を継がれ、家をでることになりました。その後、自衛隊とか職を転々として(気が弱いらしい)、野宿するようになりました。野宿しながら、時々、現金日雇い仕事や、長期の出張仕事(飯場に入る。)に出ますが、賃金未払の暴力タコ部屋だったりして、運が悪いのです。ある山奥のタコ部屋からトンコ(逃げ出す)する途中、どうにもこうにもならなくなったとき、聖書のことばに導かれ教会を訪ねて助かったという逸話もあります。今年の復活祭に念願の受洗をしました。この受洗前後、ある女性に見初めて、仕事につくことを決意しました。それでは、ということで、まず、アパートを借りて、住居を定めて職安へというコースを取りました.早速、アパートに入りました。とりあえず、15年間の野宿生活にピリオドを打ちました、が、職安に行くのが嫌で(字を書くのが苦手。)新聞広告を見て就職しました。それは、建築現場の後片付けですが、最初の一ヶ月は順調でした、しかし、生活費の工面のため前借りをして、給料日には一銭も貰えないのが三ヶ月続きました。その間、現場で怪我をしたりと、これまた運が悪かったのです。その会社もある時夜逃げしたようです。そこで、ようやく、職安に出掛け、やっと、まともな?会社(清掃)に職を得られました。
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彼女と出会ったのはこんなきっかけでした。三年前のある日、Yちゃんを出せ、と恐い形相で福信館に乗り込んできたのです。私は、訳がわからず、びっくりしてしまいました。理由を聞いたら、Yちゃんから、福信館に行ったら、もうかる仕事がある、と誘われたので、Yちゃんを泊め、御馳走を食わせたら、次の朝、いなくなってしまった、それで、頭に来て、ここへ捜しに来た、というのです。その時は、説明して引き取り願いましたが、その後、GOちゃんの父ちゃんが福信館へ着替えを取りに来たり米をもらいに来たりしましたので、事情を聞くと、彼女は仕事を探しているということでした。ある時、わたしの友人から、あなたのホームレス人材活用センターで部屋の掃除をしてくれないかとの話がありました。そこで、GOちゃんのことを思いだし、聞いてみると答えました。GOちゃんは三度ばかり彼女の家へ掃除に行きことができ、多少の小遣いを得られました。その内、GOちゃんの父ちゃんが勤めに行き出し、野宿では仕事に差し支えるからと、アパートを世話して欲しいと言ってきました。そこで、高齢者アパート基金から必要経費を借りだし、96年の暮れに、入居しました。お父さんは、そこから、働きに出かけられるようになりました。父ちゃんの給料では食べて行けないと、GOちゃんも仕事を探していますが、まだ、前の夫との離婚が成立していないため、本籍地を移せられず、そのため、仕事を得られない、と嘆いていました。
それでも、彼女は、仕事を探す合間、明るく、元気で、福信館の手伝いに来てくれます。やはり、手伝いに来る野宿のおじさんたちのために食事を作ったり、私の仕事を補ってくれています。
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