一飯の出会い

福信館炊き出し代表 竹谷 基


 去年の夏頃から、T市でパトロールを始めた。と言うのは、私の勤め先の付近にも野宿を強いられた人がいるのではないかと思い、もし、いるならば、何かの力になれる機会を作りたかったからであった。まず、仲間と一緒に月二回、市内の主立った公園三ヶ所から始めた。長続きできるために無理しないと決めた。内心は出会わなければと願っていたが、残念、とある公園のベンチで座っていた。「何かお困りではないですか」と恐る恐る尋ねた。行くところがない、との返事だったので、持参したパンと飲み物を貰っていただいた。毎度、同じ場所で同じ人に会うことはないし、全く見かけないことの方が多い。また、ある日、別の公園では自転車で移動している方と出会い、食事に困っているとのことで、同じく、パンと飲み物を頂いてもらい、どこから来たのかと、問われたので、市内の教会から、食事必要でしたら、寄ってくださいと、場所を教えた。今のところ、私たちに出来ることはたったそれだけでしかない。腹一杯の食や宿も、衣類も、相談にものれない、野宿生活者に会う度に、後味悪く無力さを知らされる。

 パトロールを始めてから、正月近く、ある人から、橋の下に一人いるとの情報を得て、早速、訪ねました。『ハシモト』と名乗られて、アルミ缶拾いで生活しているとのこと、心臓が悪く市役所からアパートへ入るように勧められている、と教えてくれた。パンと飲み物、カイロを貰っていただき、教会の場所を教え、また来ることを告げた。数回訪ねた後、アパートへ入ると言われて、その場から出て行かれた。
正月過ぎ、大仏さんのある公園で、丁度、その四阿で寝ていた方と出会った。昨晩名古屋から歩いて来て休んでいた。これから、屋根のある所を転々と移動する、昨日から何も食べていないとのこと、持参した弁当を貰っていただき、「助かった」と喜ばれた。夏近くのある日、夕闇迫った薄暗い中、四阿のベンチに座っている方が居られた。声をかけ、お弁当を貰っていただいた、ニッコリとされた。
夏の夜、公園の水を飲まれていた人がいた。声をかけた、「何かお困りではないですか」。すると、「困っている」との答え、「お弁当ありますが貰っていただけますか」、「貰う。」受け取られて、早速、食べ始められた。いつも、ここにいる、と聞き、また、来ますと別れた。弁当が一つ残っていたので、それも貰って頂いた。

 T市でパトロール始めて一年経った。私たちが当たり前のように衣食住に足りた生活をしている陰で、理由はともあれ、野宿をしなければならない方が必ずいる、ことにあらためて気づかされた。たった一飯の出会いしか出来ないけれど、出会った彼らが幸いになることを祈り、野宿をしなくても良い助け合いの社会を作ることに努めるのが私たちのやれることだと思った。
みなさまの日頃からのご理解とご協力に感謝します。どうか、みなさま、誰もが幸せになれる世の中にいしょに変えて行きましょう。

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