今回の受刑者として名古屋刑務所での生活状況



 事件を起こし受刑者として名古屋刑務所で一年半本当に辛い苦しい生活を送りましたが、本当に恐ろしい所です。一言では言えません。社会で生活を営んでいる人達にはわからないと思います。これも悪い事をした報いだと思います。又自業自得だと反省も致して降ります。社会復帰ができて私は心から感謝している気持ちで一杯です。

 九月二十三日刑務所を出所して門を出た時は本当にうれしかったです。やっと地獄から抜け出られたなと思った時涙が止まりませんでした。心から念じた事は二度とあの思いはしたくありません。石にかじり付いても頑張ります。神父さんを初め、木戸さん林さん、私の為に親身にして頂き誠にありがとうございまいした。心からお礼を申し上げます。この親切を無駄にしないように私も一生懸命頑張りますので今後ともどうぞよろしくお願い致します。

 受刑者として名古屋刑務所での毎日の生活状況を詳しくこれから筆記致しますのでどうぞ読んで下さい。朝六時半になるとチャイムが鳴り、職員の起床という号令で全員が起きます。時間が無い戦争のようなさわぎです。雑居生活ですから大変です。男ばかり七名の毎日の生活ですから言葉になりません。お互い一人一人順番に顔を洗い、部屋の整理が終わると朝の点検の順番を待ちます。点検が始まり一人一人番号を大きな声で言います。小さな声だとやり直し、点検が終わると食事です。食事も順番があって古い者から新入り迄の席が決まって居ます。ご飯は米六分、麦四分の割合です。丼で食べますが色が黒いです。おかずはタクアン三切れと味噌汁で具はほとんどないと同じです。最初はおどろきました。慣れとは恐ろしいものね、少し経つと慣れます。食事が終わり少し経つと出房という号令が掛かり皆が部屋から出て廊下に列びます。一二三と番号を言います。それが終わると全員が歩いて工場に向かいます。検身所に入ると舎房着を脱いで素っ裸になり職員の検査を受けます。そして許しがあると今度は工場着に素早く着替えて工場に入ります。工場に入ると又、整列して職員から番号と言われ全員が順番に声を出して行いますが、きちんと出来ない時が多いです。二人か三人知恵遅れの者がいて人数が合いません。何回もやり直しの時があって職員の先生も大変だと思いました。それが終わり職員から作業の事に対して怪我をしないように又、作業中は脇見や私語は絶対にしないようにとの話があります。用件がある場合は帽子を取って手を挙げて許可を取る事を忘れないようにと念を押されます。受刑者ですので相方がありませんのが本当に厳しいです。作業が始まらなければ職員が回ってくるので手を抜くことは絶対に出来ません。私達の工場では豊田自動車の部品を作って居ました。一班から八班まであり全員で八十人居ました。男ばかりの生活は、それは話では言い尽くせません。渡世人や殺人を犯した人、車上犯と色々な事件を起こし受刑者として生活しているので、いさかいが絶えません。一日でも居る所ではありません。

 話がそれましたが、10時になると15分の休みがあります。その時は作業中で話がしたくても出来ませんので、全員が仲のいい友達と本当に楽しく笑いながら雑談をします。よろこびの時間です。お茶が出ますが、名ばかりの色のついた刑務所だけのお茶です。味がありません。休み時間も終わり工場に帰り又、全員で点検です。何事もなければ作業に集中します。午前十一時四十分になると、先生から一班手洗いという号令がかかり各自が席を立って手洗いに向かいます。トイレに行く人、手を洗う人。八班まで終わると全員整列して番号を取り食堂に向かいます。刑務所では一日に食事のメニューが決まっています。一週間分のメニューが壁に張ってあります。社会の人達は刑務所で出る食事を見たらおそらく横を向くと思います。私も最初見た時本当におどろきました。食べられた物ではありません。本当に魚にしても、肉にしても、何もかもです。でも、そんな事は言っていられません。我慢してでも食べなければ身体が持ちませんので、無理してでも食べます。刑務所での食事はネコでもまたいで行くと言われる位です。本当に人間の食べる物ではありません。鮮度が落ちて居ます、くさいです。そんな所に一年半も辛い苦しい悲しい生活を過ごして、又我慢も致して参りました。いい意味の心の修行を身体に付けてきましたので、よほどの事でない限り絶えられる心は出来ております。又、覚悟も出来て居ます。又、食事の話になりますが、パンが水曜日と土曜日に出ます。パンは刑務所で作っています。パン食の時は,ジャムとぜんざいとサラダです。受刑者は、パンの時は本当に喜んでいます。普段の食事が悪いので特に感じるのだと思います。受刑者は食べる時と風呂に入る時と夜の寝る時だけが楽しみで、あとは何もありません。お風呂には毎週三回入ります。月・水・金です。風呂に入る時間は十五分です。ぐずぐずしていれば直ぐ時間がきます。刑務所という所は早い分にはいいですが遅いと職員からもたもたするなおこられます。十五分では、満足に身体も洗えません。ひげも剃れません。夜は消灯が九時です。寂しい音楽が流れ刑務所だなとつくづく感じます。以上が私が感じた受刑者としての一日です。

 神父様にはこの手紙を見てどう感じたでしょうか。刑務所には現在2500名の受刑者が生活しております。皆さん刑の長い人又、もう少し経つと出所する人、それぞれですが,刑務所は人が生活する所ではありません。石にかじりついても社会で頑張ります。話は変わりますが神父さんを初め、林さん木戸さんのお陰で社会の仲間に入る事ができました。本当に有り難いと心から思っております。心からお礼を申し上げます。私も元気とはいいながら74です。残り少ない人生を又、たった一度の尊い命を無駄のない有意義のある過ごし方を送りたいと思いますので今後ともどうぞ宜しくお願い致します。以上で私の筆記を終わります。


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