新たな出会い

福信館炊き出し代表 竹谷 基



 弁護士からの電話

 時々、ある弁護士から電話を貰う。きっかけは、NPOささしま共生会が関わってた人が犯罪を行い、一審を不服として控訴して、その国選弁護人となった。その被告から竹谷という神父(私のこと)を捜して欲しいと頼まれ、やっと居場所がわかり電話したとのことだった。そして、証人になってくれれば、刑が減軽されるかもしれないとのことでした。それは、その被告人が捕まって、留置所にいたとき面会や差し入れに行ったことがあったから依頼したのだと思う。私は初めてのことで戸惑ったが力になれればと想い引き受けることにした。責任をもって被告人の更生を引き受けますと陳述書を書いただけで、証人に立つことはなかった。結果的には、残念なことに控訴棄却だった。そして、その彼Aさんが刑を終え、この9月に出所した。刑務所から真っ直ぐ私の所へ来られたので、早速、アパートを借りて、生活保護を取り、新しい生活を始めた。
そのことを機に、弁護士と親しくなり、罪を犯した野宿生活者と関わることになった。
今年の2月には、同じような陳述書を提出し、証人にも立った。何しろ、初のことでしたから緊張しっぱなしでした。しかし、法廷では、被告人は惨めでした。周りは大学出のエリートの裁判官・検事・弁護士と口の立つ人ばかり、質問や追求にその野宿生活者になるしかなく、万引きするしかなかった被告人は口ごもるばかりで答えられない。つい、私は思わずにはいられなかった、「この小さくさせられた被告人を味方する人は誰もいないのか、神しかいられないのだと」と。残念ながら、実刑となった。

 新たな仲間

 8月、9月と続けて依頼が来た。まずは、拘置所に面会に行き、私が身元引受人になることを伝えた。同様に、陳述書を出して結果を待った。幸い、執行猶予となり新生活を始めることとなった。同じく、アパートに入居、生活保護受給となった。こうしてAさん初め、三人の方が私たちの仲間となった。いずれも、60才を超えた方なので、働くことは無理だから、他に生き甲斐を見つけて、安心、充実した残りの人生を送られるよう応援して行きたい。

 私たちの出来ること

 しかし、この三人のように、刑を終えたり執行猶予になっても、身元引受人がない場合、行き場所、生活の根拠地がなく、野宿生活者にならざるを得なくなる。そして、生きるため、また、犯罪に手を染めることになる。と言うことは、日本は野宿生活者や犯罪人を再生産する社会なのだ。倒れた人、躓いた人が生き直すためのチャンスのない、冷たい、無慈悲な社会であることを改めて知らされた。
「野宿生活者のいない社会」を目標としている私たちの活動は、炊き出し以外にも、このようにして、脱野宿生活を支援し、新しい人生を送られるよう応援しています。それは、この世界がいたわりと愛にみちた優しい世界になるためです。

どうか、みなさまもご一緒にこの働きに参加しませんか。
みなさまの暖かいご理解とご協力をお願いいたします。

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