ももちゃんの一分間説教



今週の一句
口一杯 拡がる想い 栗きんとん

―もとゐ―


 2022年10月2日(日)
 年間第27主日

 ルカによる福音書17章5節-10節

17,5 使徒たちが、「わたしどもの信仰を増してください」と言ったとき、
17,6 主は言われた。「もしあなたがたにからし種一粒ほどの信仰があれば、この桑の木に、『抜け出して海に根を下ろせ』と言っても、言うことを聞くであろう。
17,7 あなたがたのうちだれかに、畑を耕すか羊を飼うかする僕がいる場合、その僕が畑から帰って来たとき、『すぐ来て食事の席に着きなさい』と言う者がいるだろうか。
17,8 むしろ、『夕食の用意をしてくれ。腰に帯を締め、わたしが食事を済ますまで給仕してくれ。お前はその後で食事をしなさい』と言うのではなかろうか。
17,9 命じられたことを果たしたからといって、主人は僕に感謝するだろうか。
17,10 あなたがたも同じことだ。自分に命じられたことをみな果たしたら、『わたしどもは取るに足りない僕です。しなければならないことをしただけです』と言いなさい。」

 弟子たちのイエスへの頼み「信仰を増してください」は「信仰」を量的な力と考えている。当時のユダヤ教では律法厳守の競争があった。ファリサイ派より厳格と主張するエッセネ派のように。また、今回の弟子たちが病気いやしの超能力、小さき人々を躓かせる指導者を諌め排除できる権威の力を持つ資格のあることを主張するため。

 それに対しイエスは「芥子だね一粒」の信仰、つまり、自己を他者の上に立たせる量、力、権能としての信仰ではない、小さき者を顧みてくださる神の確かさへの信頼だと言う。

 なんとなれば、イエスの神の国運動は自己の出世ではなく見失った羊を探し出し見つけ喜び祝うこと、放蕩息子を待ち続け帰郷を祝う譬え話のように、ユダヤ教では「罪人」と呼ばれ見捨てられた小さき人々の命を回復し人生の喜びを取り戻すことだから。

 言わば、この世の利己的排他的在り方から神の意志である多様性と包括性の基に生きることへの方向転換であった。イエスと出会った「小さくされた」人たちはマリアのように『かえり見給うた』神を崇め讃え、新しい人生を始めたのであった。(参照 田川訳ルカ1.46?55)この神の顧みを「信」、確信として人生を歩むところ山をさえ動かせるのだ。(参照 マルコ11.20?23) 
今週の一句
置土産 色づく大地  銀杏かな

―もとゐ―


 2022年10月9日(日)
 年間第28主日

 ルカによる福音書17章11節-19節

17,11 イエスはエルサレムへ上る途中、サマリアとガリラヤの間を通られた。
17,12 ある村に入ると、重い皮膚病を患っている十人の人が出迎え、遠くの方に立ち止まったまま、
17,13 声を張り上げて、「イエスさま、先生、どうか、わたしたちを憐れんでください」と言った。
17,14 イエスは重い皮膚病を患っている人たちを見て、「祭司たちのところに行って、体を見せなさい」と言われた。彼らは、そこへ行く途中で清くされた。
17,15 その中の一人は、自分がいやされたのを知って、大声で神を賛美しながら戻って来た。
17,16 そして、イエスの足もとにひれ伏して感謝した。この人はサマリア人だった。
17,17 そこで、イエスは言われた。「清くされたのは十人ではなかったか。ほかの九人はどこにいるのか。
17,18 この外国人のほかに、神を賛美するために戻って来た者はいないのか。」
17,19 それから、イエスはその人に言われた。「立ち上がって、行きなさい。あなたの信仰があなたを救った。」

 今日の箇所もルカの救済史観を反映している。つまり、神の救いがユダヤ人から異邦人キリスト教会に移行されたことを物語っている。

 さて、イエス運動は「小さくされた」人、苦難にある人たちへの神の顧みを証しすることであった。らい病人、他の病気・障害は人を不条理にもユダヤ人共同体から排除し、一切の人間的尊厳を奪われたのだった。彼らが癒やされ「清い者」と認定を受け共同体へ復帰されるのは祭司のみの権限であった。(参照 レビ記13?14章)と言うことはイエスの癒やしがユダヤ教違反を承知してのことなのだ。

 何となれば、神は世間から見捨てられた人たちをこそ高く引上げられる方であるとイエスは確信していたからだ。

 それは、同様に、「徴税人や遊女」との会食もユダヤ教指導者からの非難、あげくは、律法違反に咎められても続けたことからも明らかだ。つまり、イエスは「小さくされた」人たちへの関わりには見返りをもとめなかった。偏に、彼彼女らの幸いを願ったのだ。

 従って、今日のイエスが感謝のために戻って来なかった人が多くいたのを嘆いたことはイエスの振る舞いとはそぐわないのだ。後の教会のイエスから逸脱した姿ではないか。


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