「原発」とダルク

ダルク後援会 代表 竹谷 基


 目的地福井県敦賀市は、あれっ、と思うほど近かった。車で約2時間、もし、あの破局的事故が起きれば、名古屋への影響は必至だと感じた。案内者と落ち合い、敦賀半島を回った。初めは、気比の海岸へ。高校野球の甲子園大会ではよく校名はこれが由来かと気付いた。目の前の海岸は青く澄んでいた。しかし、年々白浜が浸食され狭くなったと聞かされた。それ程、日本海の波は凄いのか。次に、今は停止中の日本原電敦賀第一原子力発電所を見学、もちろん、PR館での。窓越しに見える第一原子力発電所からは、関西電力・中部電力へ電気が送られると知った。まさに、名古屋にいる私の使っている電気が目の前で作られているのだ。途中、定期点検する多くの作業員が送迎バスに乗るところを見かけた。後で、「原発」が稼働して今日まで、全国の被爆労働者は45数万に上り、広島・長崎の被爆者24万人より多いと聞かされた。被爆労働者のことを考えると胸が痛む。「原発」を動かし続ける限り(福島第一原発事故の収束にあたっている労働者はもちろん)、被爆労働者は増え続けるのだ。この一点からも、「原発」の即時停止は必要なのでは。

 次に、近くの立石の海岸へ、同第3、4発電所建設のため掘り出された畳のような形の巨岩が浜一杯に運び込まれていた。天然記念物となるような風光明媚な土地が破壊されて、建設されていること、環境破壊の面からも「原発」はあるべきではないことを聞かされた。同時に、人間破壊もされていることを聞いた。「原発」立地のところは極度に貧しく差別されたところで、建設受け入れをした住民たちの豊かさへの憧れと差別する側への怨念があることを。電力会社・日本政府はその差別感情を利用して建設していることの卑劣さを指摘していた。

 もう一ヶ所、停止中の高速増殖炉「もんじゅ」を見学。同じくPR館で。そこに展示されている「もんじゅ」の模型の奇怪千万、千手観音様よろしく配管が万手の如く超複雑に巻かれているそれは、一端事故があれば何とも手の施しようがない化け物に見えた。案内者のよく見てくださいとの言葉に合点した。「もんじゅ」の立地する白木浜から建物を遠景する。浜には電力会社の交付金で建てられた立派な住民の家が並んでいた。風が強く、ここから一直線に、放射能が名古屋へ飛んで行くと聞かされ納得した。

 案内して頂いた、大谷派僧侶岡山師の西誓寺にて話し合いの時を持った。中でも、5人家族全員が癌であること、その原因が「原発」からの放射能の影響ではないかと、母親が医者に尋ねるところで、医者が口をにごしている録音テープを聴いたこと。説明では福井県の医学界ではそれがタブーであると教えられました。同様に、市民の間では「脱原発」には声を上げられないこと。市民一人一人まで電力会社からお金が送られる、など、市全体がその金に依存していることを教えられました。所謂、「原発マネー」の怖さを知らされました。

 今回の敦賀訪問は福島第一原子力発電所の事故を受けて、日本一多い15基もの「原発」があり、しかも、活断層が縦横に走っているが故に、いつ,第二のフクシマになってもおかしくないとの懸念を持ち、一刻も早い「脱原発」「原発停止」をカトリック教会が表明できるように、まず、現地を訪問し、現地の人の声を聴くために行われた。(日本カトリック市教団は11月12日発表。)現地の人の苦悩を知らされて、これは「脱原発」に向けての困難さを思わされた。

 敦賀に限らず、フクシマやその他の「原発」立地地域は、「原発マネー」に汚染されていると言う。『麻薬漬け』とも言われている。私たち大都会の人間は、その便利さ享受ゆえ、そうした、地域格差を生み、『麻薬漬け』にしていることを、私は今回の訪問で気付かされた。それは、まるで、ダルクでリハビリする若者たちに気付かなかったこととおなじではないだろうか。弱肉強食の今日の日本で、「薬」に頼らなければ生きて行けない人々を生み出している私たちの生き方と同じではないだろうか。
気付かされた私たちは、「原発」や「薬」に頼らなくても生きて行ける社会、環境を作り出さねばならないのではないだろうか。

 みなさま、今年一年、名古屋ダルクを支えて下さり、感謝申しあげます。来年も引き続き応援してくださいますよう、お願いいたします。
 よいクリスマスと新年をお迎えください。

戻る