「親学」とダルク

ダルク後援会会長 竹谷 基


 政府の教育再生会議が「親学」なるものを提言する、と言うニュースがあり、その内容を聞き思わず吹き出した。「親学」とは、親に向けた子育て指針だと言う。その内容には1,子守歌を聞かせ、母乳で育児。2,授乳中はテレビをつけない。5歳から子どもにテレビ、ビデオを長時間見せない。3,早寝早起き朝ごはんの励行、等。11項目の具体論がある。

 これを聞いて吹き出したのは、そんな事を、偉い先生方が集まって、しかも政府の会議で議論していること、そんな瑣末のことではなく、親が安心して子育てできる環境を作ることの方が大事じゃないか、なのに何故議論しないのか、と思ったからだ。

 そもそも、この「教育再生会議」からして怪しい。「教育基本法」を国に都合のいい教育をすることに改悪しながら、再生するとは、戦前の教育への再生を目論んでいるのじゃないかと疑いたくなる。愛国心とか「親学」は戦前の修身と同じではないかと思わざるを得ない。かつて、国民は洗脳され、日本はアジア太平洋戦争へ突入していったのである。いつか来た道を戻っているのだ。
むしろ、「教育再生」は汚職や不祥事の続発する政治家、官僚、財界がすべきではないだろうか。そして、日本再生こそ優先すべきだろう。

 なぜなら、少子社会、「親学」なるもの、「薬物依存症」は、政官財が率先して来た日本社会の経済利益最優先、優勝劣敗主義が原因であって、対処療法ではなんともならず、日本そのものを変えなければなくならないだろう。私の関わっているホームレス問題も同様だ。ワーキングプアと呼ばれる人が増えているというが、両者はともに社会・経済構造から必然的に生み出された人たちだ。私たちはホームレスの人たちが、「脱野宿」して、人としてあたりまえの生活ができるよう手助けしているが、後から後から、洪水のようにホームレスの人が増え続け、焼け石に水となっている。それは、グローバル経済の「一円でも安く物を生産する」ことから生じている大きな流れなのだ。

 では、その奔流を断ち切り、安心して子育て、薬に頼らない生活、ホームレスにならない、にはどうしたらいいのだろうか。ダルクでは「薬」にではなく「ハイヤーパワーや仲間」に頼ることに希望を見出している。これから、ヒントを得られるのではないか。つまり、金や物に頼る生き方ではなく、人と人とのつながり、協同組合、人的ネットワークを形成して、互いに支えられ、守られ、夢の実現に向かって行く生き方への転換にその可能性があるのではないだろうか。

 どうぞ、みなさま、今の日本の流れを断ちましょう。人が尊重され、互いに助け合い、物心の分かち合いで、みんなが幸せになる世の中にして行きましょう。


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