オショロコマ

ダルク後援会会長 竹谷 基


 耐震偽装問題やライヴドア問題もいつの間にか、トリノオリンピックの影で忘れ去られた感がある。前にも書いたことがあるが、私は週に何回か早朝、車を運転する。そのとき、ラジオを聞くのを楽しみにしている。ところが、オリンピック中は朝一番のニュースも、オリンピックから始まる。オイオイ、NHKさん、それはないだろう、上記の問題や、憲法改正、格差問題、イラクでの爆弾テロが先じゃないかと、言いたくなる。この国のお偉いさん方は、わたしたちをなめているし、わたしたちは関心がない。結果、戦争になったり、環境が破壊されてから嘆くだけなのだろうか。

 さて、そのようなNHKだが、ためになることもある。先日、やはり同じように聞いていたら、耳を傾ける話があった。北海道の然別湖に伝わる伝説であった。
昔、アイヌの人々が自然豊かな地で生かされていたのだが、ある年、天候が悪く、食物がまったく取れないことになった。多くの人が飢えて死んでいった。苦しむ悶える村人に、女神が告げた、白蛇が現れるからそれについて行きなさい、ついて行けば、湖に出る。そこには、たくさんの魚がいるから、それを取って食糧にしなさい。ただし、必要な分だけ取るのですよ、と。村人はお告げのとおり、必要な分だけ取って持って帰り、その村は救われた。その魚の名はオショロコマ。

 「必要な分だけ」。耐震偽装問題やライヴドア問題、イラク戦争や環境破壊、これらは、「必要以上に」儲けよう、利益を得よう、という人間の貪欲が原因となっている。貪欲は人に、競争、敵意、恐れを生じさせる、とE・フロムは言っている。それらから逃れるため、人は力、金、薬物に頼るようになる。

 「必要な分だけ」それは、分かち合うこと、与えること、進んで犠牲を払う、生き方につながる。※1 私たちは「必要以上」な者にならなくていい、あるがままを認めて生きて行きたい。薬に頼らなくても、あるものを分かち、与え、すすんで犠牲を払って生きたい。そうすれば、競争も戦争も環境破壊もなくなるだろう。名古屋ダルクはそれを目指しています。
どうか、みなさまもいっしょに歩いて行きませんか。

                 ※ 1 エーリッヒ・フロム『生きることについて』より。


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