長い目

ダルク後援会会長 竹谷 基


 マンドリンの音色は何故か心にしみる。というのは、9月に私の所属するカトリック多治見教会で、ホームレスの自立を助けるチャリティーコンサートが開かれた。そのなかで、多治見マンドリンクラブの演奏があり、その美しい音色に感動したことがあった。

 今、その時の録音テープをいただいて、運転中に何度も繰り返し聞いているが、その度に、感動しているのだ。あのもの悲しいような音色がいい、特に、美空ひばりの「川のながれのように」が実に曲と歌詞にマッチしているのだ。つい、マンドリンの演奏に口ずさみ自ら感動している。多治見には土岐川(下流では庄内川)が流れ、修道院の敷地からも降りて行かれ、隠れた穴場ともなっている、それを眺めて、私の人生もその歌詞のようでありたいと願ったりしている。

 さて、川の流れのようにならないのが人生だ。昨今、人生に行き詰まっている人が増えているという。たとえば、ニートと呼ばれる人たち、それは、「働こうとしない、学校にも通っていない、仕事につくための専門的な訓練も受けていない人たち」のことだ。

 現在、15歳から34歳までで54万人(03年)いて、今後は更に増加すると言われている。これは、200万人のフリーターと合わせ、国にとって大問題となっている。というのは、将来の税収減や年金制度の破綻につながるからだ。

 では、何故、フリーターやニートと呼ばれる人々が増えてきたのだろう。従来は「たるんでいる、なまけている」と個人の所為にされてきた。しかし、実際は、高卒求人が激減していることが原因だと明らかにされた。92年には167万人あったのが05年には24万人にまで減っている。というのは、90年代後半、企業はリストラや工場の海外移転で人減らしして来た。また、大企業は大卒し
か採らないことが理由だ。つまり、「怠けている、甘えている」と言った個人的なことではなく、「就職しようにも仕事がない」という経済構造の問題なのだ。

 従って、若者たちが安心して仕事ができるためには、経営者が生産性の効率優先、利潤優先から、若者を長い目で育てて行く方向へ転換する必要があると識者は指摘している。

 果たして、それが実現するだろうか。社会全体が効率、利潤を追求している今、困難だと思うが、フリーター合わせて約300万人の若者が人生を見失っていることに心痛い。早く、対策をとってもらいたいと願う。

 「長い目で育てる」の指摘は大事だ。ニートやフリーターの問題は、社会が大人たちが若者を「長い目で育て」て来ないから起きたのだ。

 もう一度、自分をはじめ他者を、子どもや若者を「ゆっくり、じっくり、長い目で育てて」いるか問い直したいと思う。自分も同じく、効率や利潤優先で人と関わっていやしないかと。

 名古屋ダルクは挑戦しています。「薬中」と長い目で関わり続けて行くことを。そんな、名古屋ダルクにクリスマスプレゼントを送ってくださるようお願いいたします。

 みなさまに、良いクリスマスと新年になりますようお祈りいたします。


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