『自称ダルク専属掃除嬢』のその後

長谷川 忍


 気がつけば、私とダルクとの不思議なお付き合いもかれこれ15年近くになりました。当時の私は「ヤク中」でもないのに時折ダルクに顔を出しては掃除をしたりメンバーとたわいもない話をしたりする、今にして思えばかなり変わった高校生でした。そんな私をダルクは「ありのまま」に受け入れてくれました。(少なくとも私はそう感じていました。)

 それは当時の私にとって、とても心地の良い体験でした。

 2年ほど前からダルクの仕事をお手伝いすることになったため、最近は休日にダルクを訪れては苦虫を噛み潰したような顔でパソコンに向かっています。こんな私に15年もお付き合いくださったダルクの皆さんに改めて感謝いたします。

 ダルクとの出会いは、私の人生において大きな転機となりました。大学で社会福祉を専攻することにしたのも、大学卒業後に精神病院でソーシャルワーカーとして働く事にしたのも、ダルクとの出会いがあったからに他なりません。

 ダルクには、残念ながらいつの間にか姿を消してしまうメンバーや、回復半ばにして亡くなるメンバーもいます。しかしその一方で、確実に回復していくメンバーの姿も私は幾度となく目の当たりにしてきました。

 それによって私は「どんな薬物依存者でもきっかけがあれば回復することができる」ということを実感として得ることができました。こうした体験は、私がソーシャルワーカーとして目の前にいるメンバー(当時はたいてい「患者さん」と呼んでいましたが)とお付き合いするうえでも、大変役にたちました。なぜなら私は、その方がどんな病気であれ、どんな状態であれ、その人自身には回復する力があるのだということを信じることができたからです。

 ダルクとの出会いが「*ハイヤーパワーの計画」であったのかどうかは私にはよくわかりません。しかし、ダルクがこれからの私の人生に今度はどんな転機をもたらしてくれるのかと「妄想」してみると、ちょっと不安にもなり、楽しみにも感じる今日この頃です。
              (*ハイヤーパワー:自分より偉大な力)


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