人生読本「薬に病める若者と歩む」(3)

1994年12月21日放送

名古屋ダルク代表 外山憲治


 「人生読本です。おとといから3回にわたって名古屋市にあるシンナーなどの薬物依存者のための民間リハビリ施設代表、外山憲治さんに「薬に病める若者と歩む」と題してお話しいただいています。薬物依存者のためのリハビリ施設 通称ダルク は全国で8ヶ所。9年前に東京荒川区に設立されて以来、少しずつ都市圏に増えています。最終回の今日は、外山さんの立ち直りのきっかけとなったダルクとの出会い、5年前の名古屋でのダルク開設までの経緯をお話しいただきます。


 東京ダルクは、当時まだダルクとしてではなくて、後に東京ダルクを設立した近藤恒夫さんという人がいて、ある人の勧めで「もう、外山さんはきっとそこに行くしかないだろう」と、当時のクスリの問題を解決するには、彼に会うしかもう他に手はないという専門家から電話がかかってきたんですネ。「あなたはもう、あの人に会うしかない!」と………。

 でも、彼に会いにいくまで半年かかりました。“そんなヤツにあってもなぁ”とずっと思ってて………でもある日、名古屋から電話したんです。受話機の向こう側で、なんか非常に落ち着いた彼の声が流れてきたんですネ。彼が言ったのは、「あなたは病気だ、従って治療をする必要がある。そのためには今すぐ新幹線に乗って私に会いにこい!」と、それを断言したんですネ。ボクはよく分かりませんけど魅入られるように新幹線に乗ったんですネ。

 一緒にミーティングをやってびっくりしたことが………当時ボクのクスリは鎮痛剤で、1日に100錠飲んで、もう体がガタガタで内蔵疾患はある、心臓は肥大している、ご飯は食べられない、黄疸は出てる………そういう状態でフラフラで行ったんですが、ビックリしたのはネ、当時のミーティング場にボクと同じように鎮痛剤を100錠飲む人が3人もいたんですネ。これには、本当に驚きましたネ。

 そして、ミーティングが終わってから近藤さんが働いている事務所に行ったんです。荷物を持って………。彼が言ったのは「僕も薬物依存症で大変だった時期があった。」と………、「従って僕も回復したんだから、君も出来るはずだ!明日から、僕がよくなった同じプログラムをやってください」と………。ボクはまぁ、仕方なしに東京に行って彼の事務所に寝ているわけですから、「ハイ」と言うしかなくてネ。次の日から、プログラムをやり始めたんですが、その時に、彼の住居は3畳の部屋しかなくて、万年床が敷いてあって………彼が言ったのは“そこに寝ろ!”と………。何も知らないボクは、そのふとんで寝たんですがネ―うす汚れたふとんでした。汚い所だなぁと思って寝たんですが―少したってから、“彼はどこで寝たんだろうなぁ?”と思って………。彼は寝る所がなかったから、事務所の机の間にふとんを敷いて寝たんですネ。「このオレに、そんなことをしてくれるヤツがいるのか!?」という驚きでした。それも、「こんなダメなオレにですネ。誰かが何かをしてくれるんだ!」という驚きで………そこら辺で何か信頼関係みたいなものが出てきて、そのあと、ずっと彼とミーティング場に行き続けたんですネ。そしたら不思議なことに止まっちゃいました、クスリが………。他に何もしていませんネ。ただ、ミーテイングに朝と昼と夜と出たと………不思議なことに、それが気がつかないうちに自立していくようになっていくプログラムだったと………うまく作られていたということですネ。ただ言葉でいうとミーテイングに1日3回出るだけということなんですが、この止め続けるためのトレーニングを、東京で6ヵ月しました。

 そして、そのあとに東京ダルクを近藤恒夫さんが設立しました。メンバーがどんどん増えてきて近藤さん一人じゃ出来なくなってきて、スタッフが必要だということで、ボクがダルクに勤めるようになって………。そこに全国から人が宅急便の荷物のように集まって来て………。すったもんだのドラマの様な日が続くわけですが、確かに貴重な体験をしたなぁと思うようになっていきました。その頃から、ボクも名古屋で生まれ育ったもので………。名古屋の地で薬物を使い始めて、自分でやったこととはいえ、いろいろ大変な思いをしてきたわけですから、いずれ、生まれ故郷の名古屋に帰ってダルクを作りたいと思っていました。東京ダルクで3年半いましたけど、人があふれてきましたネ。全国に1つですから「次のうつわがいる」と こういう時期でした。

 ボクは3年半東京でやって、まあ名古屋に帰ってきたと、名古屋でやろうと………。北区長田町にあばらやを借りて、今度はこの地域の薬物依存者というか,薬物の問題を抱えて苦しんでいる人達と一緒にですネ、少なくとも誰かのためにじゃありませんから、自分のためにまだ見ぬ薬中を待っていたということでしょうか。


ダルク後援会よりお願い

 名古屋ダルクは、この6年間にわたって多くの薬物依存者の社会復帰を可能にしてきました。これもひとえに皆様の温かいご理解・ご協力によるものです。まことに有り難うございます。

 おかげさまで今年から、ダルク・ポップアート・ファクトリー(印刷物版下工房)を、ダルクの声を皆様にお届けするとともに、ダルクのメンバーの自立、社会性回復訓練の場としての活動を開始するに至りました。

 しかし、日本では薬物依存者に対する偏見からか、公的な援助がないこともあり、名古屋ダルクは皆様方の善意による献金のみで運営されていて、昨今の深刻な不況の中で、まさに危機的な状況に陥り、その運営を継続することが危ぶまれています。

 そのようなことで皆様に是非ともお願いしたいのですが、名古屋ダルクが活動を継続できるよう、名古屋ダルクを経済的、精神的に支えるダルク後援会にお力をお貸しいただきたいのです。

 また、上記のダルク・ポップアート・ファクトリーでは、小冊子やニュースレターなどの版下作成の仕事をやっておりますので、そのようなご用命がありましたら、ご一報下さい。一生懸命やらせていただきます。よろしくお願いいたします。

ダルク後援会会員募集中

 ◇特別賛助会員(年一口)   50,000円 30,000円 10,000円

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ダルク・ポップアート・ファクトリー

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